社会学理論・研究ノート-大昔の偉い人は何を考えたのかー


マルクスの発展段階論

マルクスは、独自の史的唯物論の立場から社会を分析する。彼は社会の変動を、その社会の持っている生産様式と関連付けて説明する。
彼は人間それ自体自然であり、その生命活動として自然との不断の物質代謝によって人間及び人間社会は再生産されると考える。この物質代謝を媒介するのが人間の合目的な生産活動である。この生産活動を規定する生産様式は、労働を介した自然へ働きかける人間の力である生産力と、生産活動を営む際に人間が取り結ぶ社会的関係からもたらされる生産関係から成り立っていると考える。彼はこの生産力の発展が一定の段階に達すると、その対応関係である生産関係との間に矛盾を生じるようになるという。そして、やがてそこに支配/被支配(搾取)という社会関係が生じることになるという。その結果、領主と農奴、資本家と労働者というような区分のもと、階級とよばれるものが生じることになる。 この社会関係が、やがて闘争をもたらし社会に変化をもたらすとマルクスは強調した。

彼はこの<生産力>と<生産関係>との関係から人間社会の変動を捉え、歴史を振り返ることによって、原始共産制社会、古代奴隷制社会、中世封建社会、近代資本主義社会へと社会がその形態を変えてきたことを指摘し、そして来るべき社会としての<社会主義社会>へと社会形態は段階的な発展を遂げると主張した。

諸階級に分裂した社会では、その階級間において相対立する利害を巡って闘争が起きることをマルクスは指摘したがこれを特に<階級闘争>と呼ぶ。彼は「社会の歴史は階級闘争の歴史である」という。そして近代社会においてこの階級闘争とは、労働者と資本家の対立となる。この対立において労働者は、はじめは個人の特殊な条件に基づいた即時的階級としてその闘争を行なうが、やがて、一定の階級意識と組合、政党などの組織性をもった対自的階級に成長して国家権力の奪取を目指して、闘争することになると主張する。このようにマルクスは、社会の中に生じた階級という観点から社会の変動を分析したのである。
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# by ksnksociology | 2006-07-02 11:53 | 社会変動論


スペンサーの社会進化論

スペンサーは自由主義的な個人主義とダーウィンの進化論の強い影響の下、社会の変動過程を独自の社会進化論(evolutionary theory of society)によって説明しようとした。それは、社会を有機体とし、分化と統合の同時進行という形で、分業による機能分化と政治機能や管理機能の集中を生物進化になぞらえた。

彼はコントと同様に社会静学と社会動学という視座から社会の分析を試みる。そして、社会動学の立場から社会の変動を軍事型社会から産業型社会へというプロセスを持って説明している。

彼は、人類の最大幸福を実現するような社会を完全社会と呼び、この完全社会にいたる過程を分析する中で<軍事型社会から産業型社会>への進化を指摘する。
<軍事型社会>とは周囲の敵対的な社会に対抗するために集権的な社会構造を持ち、<強制的協働>によって成員が全体に服従しているような社会であり、諸個人は社会に抑圧された形になる。そこでは、身分的・全面的支配や集権的統制が見られると指摘する。
一方、<産業型社会>では、同等の個人の自由な社会関係が見られるという。そこでは、自由、契約、分権化、自発的協働がみられ、分化と階層化が進んで成員は異質化、個性化するが、相互の連帯が強まり緊密な結合が生ずるような社会であり、個人は社会によって抑圧されずむしろ擁護されることになるという。

このようにスペンサーは、前近代から近代への進化を<軍事型社会から産業型社会へ>として捉え、社会の変動を説明するのである。
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# by ksnksociology | 2006-07-02 10:07 | 社会変動論


コントの三段階の法則(law of the three stages)

コントは社会の歴史を「人間の精神(知識)の変化」によって支配されると考える。そしてその精神の発達を、神学的段階(thological stage)形而上学的段階(metaphysical stage)実証的段階(positive stage)の3つの段階をもって説明した。そして、これら精神の発達に応じて社会の状態も変化すると考えた。

最初の段階である神学的段階とは、さまざまな現象を超自然的なものに根拠付けて説明しようとした、いわば虚構の段階である。例えば、原始未開の時期は物神崇拝、古代ギリシャ・ローマでは多神教、中世及びルネッサンスの時代は一神教という形態にみられると彼は指摘する。

第2段階である形而上学的段階とは、何らかの実体ないしは人格化された抽象物を想定し諸現象の説明を試みる科学的説明の段階である。
そして最後の実証的段階とは、諸現象の解明を推論と観察によって行なう科学的説明の段階を指す。

そして、これら3つの精神の発展に対応してそこに見られる社会状態が、それぞれ軍事的状態法律的状態産業的状態である。軍事的状態では軍事的な社会関係を中心とし征服が目的とされ奴隷制が敷かれ、法律的状態では法律的な社会関係のもと法律家が政治を支配することになり、産業的状態では産業家が社会において支配的地位を占めるというものである。このように、コントは精神の発達という観点から社会の変動を説明した。それは人間知性が直線的に進化するという進歩の理念に貫かれた精神史観の一種である。
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# by ksnksociology | 2006-07-02 09:38 | 社会変動論


ウィリスの文化的再生産論

ウィリスは、労働者階級に育った若者が自分の親と同じ労働者階級の職業に就くことが極めて多い点に着目し、なぜそのような事態に至るのかという観点から文化的再生産の考察を行なった。

従来の見解では、労働者階級の子どもたちは多くの場合、学業で好成績を収められなかったことを理由に、あるいは将来、自分は高給を得たり高い地位につけることはないと自ら能力を限定することによって、親と同等の職に就くと考えられてきた。そして学校は、知力の面で限界を認めることを教え込み、労働者階級の若者は、劣等性を受け入れることで、労働者階級の職業に就くことを指摘されてきた。

しかし、ウィリスはこの指摘を批判する。たとえ、学業に対して劣等感を持っていたとしても、自らが不成功者であると生涯思わずに、いわゆる下積みの仕事をしている多くの人々がいる。そこには学業以外の何かがあると彼は指摘した。

彼はそこに反学校文化と労働者階級独自の文化を指摘し、若者はそれら文化によって自らの価値観を得、またそれを担っているという。そして、肉体労働への男らしさや、優等生の多くが就くホワイトカラーに対して批判的な価値観を持つことになると指摘する。確かに学業不振は1つの原因ではあるが、労働者階級の人々によって形成された文化の中で育った若者は、望んで労働者階級の職業に就いている者も多いと指摘したのである。
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# by ksnksociology | 2006-07-02 09:10 | 学校教育と文化的再生産


バーンスタインの社会言語コード理論

バーンスタイン(1927~)は、労働者階級の子供たちの教育到達度の低いことや、高等教育になじめない子供たちの問題に注目する。その際彼は、言語コードの理論をもってそれを分析、説明しようとした。彼はブルデュー同様に教育上の不成功の要因を言語に見たのである。

彼は中産階級と労働者階級の子供たちにおいて言語使用の差異を見出す。労働者階級の子供たちは、特定の集団のみ通用するような、あるいは同じ状況を共有したものにのみ通用するような話し方をするという。彼はこれを限定コードという。
それに対して中産階級の子供たちはこの限定コードを用いるほかに、特定の集団を超え、同じ状況を共有していなくても話し相手に通用する、説明的で、いわば抽象化された話し方を心得ているという。そしてこれを彼は精密コードと名づけた。

このような言語コードを身につける背景に、子供たちのおかれた家族の階級の問題があると指摘する。そして学校は精密コードを公式言語として用いるため、精密コードに慣れていない労働者階級の子供たちは学校に適応できない事態に至るというものである。
そして、このような子供たちは上の階級への昇進を妨げられ、そしてその子供たちが親になったとき、その子供も同様のプロセスを経てしまうような悪循環(再生産)の構造がそこにあると指摘するのである。
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# by ksnksociology | 2006-06-22 08:21 | 学校教育と文化的再生産


ブルデューの文化的再生産論

ブルデューは、社会における階級的格差がいかに形成され、その構造が、いかに社会において正当化されるかという事に注目する。特に彼は教育という観点に注目し分析を行った。

彼は、フランスにおいて、平等な教育機会が保障されているにも関わらず、大学以上の高等教育機関への進学者において、中産階級の子供たちと労働者階級の子供たちとの間に明らかな階級間格差が生じている現実を指摘する。

そして彼はこの原因を文化資本の格差にあると指摘する。その例として文化資本の1つである言語資本を挙げる。家族によって用いられる言語資本は家族のおかれた階級的地位によって異なっており、中産階級の言語は抽象的、形式主義、婉曲語法を特徴としているのに対して、労働者階級の言語は個別特殊的、具体直接的な特徴を持っているという。

ところが、学校文化の中では中産階級の言語体系が一般的なものとして受け入れられている現実がある。そのような言語体系での教育は、労働者階級の子供たちに戸惑いを与え、さらには理解力にまで影響を招いていると指摘する。

そして、外見的には中立的で民主的な学校という枠組みではあるが、実際は中産階級優位の環境での選別が起こり、しかもそれが社会的に正当化されていると指摘した。言語や文化を身につけるのはきわめて後天的なことであるが、社会の中において、それらは特定の階級内で繰り返し再生産され、その結果として、不平等な階級格差も再生産されていると指摘するのである。
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# by ksnksociology | 2006-06-22 07:10 | 学校教育と文化的再生産


ベネディクトの文化論

ベネディクト(1887~1948)は、各文化には各個人のパーソナリティと同様に首尾一貫した思考行動の型を持っていると主張する。彼女は、人類の諸文化は少なからず異なった様式、価値秩序を持っており、その多様性を内面から理解することが必要であると考える。

彼女は、アメリカ南西部のブエブロ族とその周囲にいる平原インディアンの文化の対照的差異に注目する。ブエブロ族の文化は威厳と温和を理想とし感情の抑圧や緩和などをその特徴としていた。一方、周囲にいる平原インディアンの文化は、勝利と恥辱を両極端とする感情の中に生きてきた。彼女は前者をアポロ型文化と呼び、後者をデュオニソス型文化と呼んだ。

また、彼女は『菊と刀』において罪を基調とする道徳の絶対的標準を説く西洋のキリスト教文化を罪の文化と呼び、恥が強制力である日本の文化を恥の文化と呼んだ。彼女は様式主義の立場に立ち、さらに精神分析学的考察を取り入れこの特徴を指摘した。

そこでは文化のうちに制度化されている動機、感情、価値を1つの型として取り出すことが試みられた。人々のエートスに注目して文化を考察したといえよう。
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# by ksnksociology | 2006-06-22 05:06 | 文化論


ハースコヴィッツの文化論

ハースコヴィッツ(1895~1963)は、文化の伝播(cultural diffusion)を研究する中で、伝播とともに文化要素は変化を伴い、単純に文化の型が伝播されないという点に注目し、文化変動の問題を展開する。

文化変動(cultural change)はその速度や規模に関して未開社会と文明社会では大きく異なる。孤立した未開社会においてその変動はきわめて緩やかに起こっている。表面上目立たない微小で緩慢な変化が蓄積されると、一定の方向性を持った緩やかな文化変動を引き起こす場合がある。彼はこの様子を文化的漂流(culutural drift)と呼ぶ。

彼は文化の変動には、発明、発見、技術革新、人口変動などに見られる社会の内部から起こる<内的要因>と、文化の伝播、異文化との接触に基づく<外的要因>があると指摘する。
一般に、この外的要因に基づく文化の変化、特に従属的な位置にある社会の文化が支配的な社会の文化に従うように急激に変更されるような2つの社会の間の相互作用の過程を<文化変容(acculturation)>と呼ぶ。
また、文化を受容した側が部分的な要素の導入にとどまらずその文化全体を再統合し、影響を与えた文化と全く相似の文化になる現象がある。これを文化同化(culutural assimilation)>と呼ぶ。
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# by ksnksociology | 2006-06-22 04:23 | 文化論


リントンの文化論

リントンは、文化とパーソナリティの関係に注目し、ある文化を共有する人に見られる基本的パーソナリティと性別、年齢別、階級別に異なる地位のパーソナリティを区別する。

また彼は、文化というものが研究者によって抽象化された構成概念という側面をもつと捉え、現実文化型構成文化型の2つの操作概念を提示する。
現実文化型とは、成員によって学習され分有された行動様式の総体を指す。
一方、ある社会の特徴を捉えようとする時、そこでは現実文化型からの抽象化が行なわれる。彼は現実文化に見られる最頻値を抽出することによって、その特徴づけを行なう。そしてその最頻値から導き出された文化の型を彼は構成文化型と呼んだ。その意味で構成文化型とは文化現実文化型の代表値であるといえる。
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# by ksnksociology | 2006-06-20 06:19 | 文化論


文化の概念と定義

文化とは人間が後天的に獲得し、発達させるものであり、集団的、社会的環境にその多くを負っている。そして、文化は学習を通じて獲得され伝承されるところにも特徴がある。その構造は複合的であり、かつ、そこで一定のパターンが見られるものである。文化は人間の集団生活に密接に関係しており、そこには潜在的にしろ顕在的にしろ、集団性、社交性が反映されたものなのである。

文化に関する定義としては主に4つある。

文化を複合的全体と考えるE.Bタイラーは「広い民族誌的意味において理解すれば、知識、進行、芸術、法、習慣及び、人間が社会の成員として身につけたその他の才能、習性から成り立つ複合的全体」と定義し、また文化を分有、伝達されるものと考えるリントンは「習得された行動と行動の諸結果との総体であり、その構成要素は成員によって分有され伝達されるもの」と定義する。

また、生活様式に注目したハースコヴィッツは「文化は一団の人々の生活様式であり、一方、社会とはある生活様式に従う諸個人の組織化された集合体である。社会は人々の組成であり、彼らの振舞い方が文化である」というものや、価値に注目したクローバーとクラクホーンによる「文化とは行動に関する、また行動のための明示的もしくは暗黙裏に存在するパターンからなる。それはシンボルによって習得伝達されるものであり、文物としての具体的表現を含みつつ人間集団に特有の業績を作り上げる。文化の中核は伝承された観念及びそれに付与された価値である」という定義がある。
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# by ksnksociology | 2006-06-20 05:25 | 文化論

    

大学院入試・試験用のメモ。底本…公務員試験地方上級・国家Ⅱ種バイブル⑩社会学<新装版>(早稲田経営出版)A.ギデンズ『社会学』第4版(而立書房)など、まだまだ追加予定!
by ksnksociology
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