パーソンズは自身の理論と社会心理学者べイルズの小集団論の成果を援用し社会システム理論をさらに発展させた。それは社会システムの存続・維持とそれを担う機能について注目した理論である。
彼は社会システムの存続・維持の機能要件として次の4つを取り上げた。
①
適応(
Adaptation)、②
目標達成(
Goal attainment)、③
統合(
Integratiton)、④潜在的パターンの維持及び緊張処理(
Latent pattern maintainance and tension)である。これら4つの機能の頭文字をとって
AGIL図式と呼ばれた。これは、社会システムはその目的を達成するため、まず<外的状況に適応し目標達成の条件を整え(A)>、状況の諸要素を統制することによって<目的達成(G)>し、システムの構成単位間の相互調整を行い<統合(I)>、構成単位のパターンの維持に努める(L)というものである。
これら4機能の充足は同時になされるものではなく、A→G→I→Lという一連の運動としての位相運動であり、上位システムの下位システムに対する分担機能を意味しているともとれる。
そして、全体社会を上位体系としてAGILを適応すると、経済体系(A)、政治体系(G)、統合体系(I)、文化的、動機付け的体系(L)となると指摘する。
さらに彼は、
一般化されたシンボリックメディアという概念を導入し、AGIL図式を発展させた。それはAGILに展開される全体社会の下位システム間の相互交換を想定したシステムの機能問題へのアプローチである。
彼は、全体社会の各下位システムは他のシステムから投入された資源をもとに自らが課せられた機能要件を充足し、他のシステムにとって重要な資源を産出すると考える。そして、下位部門間の資源の投入ー産出関係に着目し、その均衡を考察した。
例えば、経済体系において、経済的交換が円滑に行われ経済システムが容易に均衡に達することができるのは、<貨幣>という制御メディアがあるからだと彼は考える。そして、下位システム間の交換が全体システムを無秩序に陥らせないためには貨幣に類似したメディアが必要だとした、これが<一般化されたシンボリックメディア>であり、経済体系には<
貨幣>、政治体系には<
権力>、統合体系には<
影響力>、文化及び動機付けの体系には<
価値コミットメント>が挙げられている。
このように彼は、複数の人々の間に形成される社会システムというものから、<社会>というものを分析しようとしたのである。