アメリカの社会学者G.H.ミード(1863~1931)は、精神や自我が社会的相互作用の中で形成されると考える。特に彼は、他者の役割を認知し、その役割を取得することによって
社会的自我(social self)が形成されるという。
彼はその役割取得を説明するため、プレイからゲームへという段階的な説明概念を用いる。
まず
プレイの段階では、特定の他者の役割取得が行なわれると考える。子どものごっこ遊びなど、子どもが自分ではない他者の役割をまねて遊ぶ中に、他者の役割の認知、理解をみていると指摘する。
続く
ゲームの段階では、集団全体の中での役割取得が行なわれると考える。集団内の共通目標との連関で自己の役割を位置づけるということがなされる。そしてこのようなプロセスを経て、やがて社会一般の期待や規範の内面化がなされることになる。これを特に
一般化された他者の役割取得と呼んだ。
このように他者との相互作用を通じて役割を認知、受容して、社会的な自我を形成していくわけであるが、ミードはこれらを一方的受け入れるような人間を想定していない。
彼は自我を
I(主我)とMe(客我)に区分する。組織化された他者や、社会全体の役割や態度を取得した自我をMeと呼び、その一方でMeに同調したり批判する自我をIと呼ぶ。このIとMeの相互作用(構成的、反省的、問題解決的な思考=内なる会話=精神)を通じて自我は発達するとミードは主張するのである。