コントは社会の歴史を「人間の精神(知識)の変化」によって支配されると考える。そしてその精神の発達を、
神学的段階(thological stage)、
形而上学的段階(metaphysical stage)、
実証的段階(positive stage)の3つの段階をもって説明した。そして、これら精神の発達に応じて社会の状態も変化すると考えた。
最初の段階である
神学的段階とは、
さまざまな現象を超自然的なものに根拠付けて説明しようとした、いわば虚構の段階である。例えば、原始未開の時期は物神崇拝、古代ギリシャ・ローマでは多神教、中世及びルネッサンスの時代は一神教という形態にみられると彼は指摘する。
第2段階である
形而上学的段階とは、
何らかの実体ないしは人格化された抽象物を想定し諸現象の説明を試みる科学的説明の段階である。
そして最後の
実証的段階とは、
諸現象の解明を推論と観察によって行なう科学的説明の段階を指す。
そして、これら3つの精神の発展に対応してそこに見られる社会状態が、それぞれ
軍事的状態、
法律的状態、
産業的状態である。軍事的状態では軍事的な社会関係を中心とし征服が目的とされ奴隷制が敷かれ、法律的状態では法律的な社会関係のもと法律家が政治を支配することになり、産業的状態では産業家が社会において支配的地位を占めるというものである。このように、コントは精神の発達という観点から社会の変動を説明した。それは人間知性が直線的に進化するという進歩の理念に貫かれた精神史観の一種である。