スペンサーは自由主義的な個人主義とダーウィンの進化論の強い影響の下、社会の変動過程を独自の
社会進化論(evolutionary theory of society)によって説明しようとした。それは、社会を有機体とし、分化と統合の同時進行という形で、分業による機能分化と政治機能や管理機能の集中を生物進化になぞらえた。
彼はコントと同様に社会静学と社会動学という視座から社会の分析を試みる。そして、社会動学の立場から社会の変動を軍事型社会から産業型社会へというプロセスを持って説明している。
彼は、人類の最大幸福を実現するような社会を
完全社会と呼び、この完全社会にいたる過程を分析する中で<軍事型社会から産業型社会>への進化を指摘する。
<軍事型社会>とは周囲の敵対的な社会に対抗するために集権的な社会構造を持ち、<強制的協働>によって成員が全体に服従しているような社会であり、諸個人は社会に抑圧された形になる。そこでは、身分的・全面的支配や集権的統制が見られると指摘する。
一方、<産業型社会>では、同等の個人の自由な社会関係が見られるという。そこでは、自由、契約、分権化、自発的協働がみられ、分化と階層化が進んで成員は異質化、個性化するが、相互の連帯が強まり緊密な結合が生ずるような社会であり、個人は社会によって抑圧されずむしろ擁護されることになるという。
このようにスペンサーは、前近代から近代への進化を<軍事型社会から産業型社会へ>として捉え、社会の変動を説明するのである。