特定場面で相互作用している行為者のそれぞれの立場を、空間上の座標にたとえて位置関係として示したものを
地位(status)と呼ぶ。アメリカの文化人類学者
リントン(1893~1953)は、地位を
帰属的地位(ascribed status)と
獲得的地位(achieved status)に区分する。
帰属的地位とは、社会の中で継承される身分に基づいた地位であり、生誕と同時にもしくは一定年齢で個人に帰属させられる。性別、年齢、親子や兄弟姉妹などがこれにあたる。
一方、獲得的地位とは、個人の努力や競争によって自ら築き上げる地位であり、自らの努力によって得られた職務上の地位などがこれにあたる。占有するには何らかの才能・知識・技能を必要とする。近代社会における専門職・自由職(弁護士・医師・スポーツ選手など)の多くは、個人の意欲的な達成動機に基礎付けられた獲得的地位であるとみなすことができる。
そして、これら
社会や集団から割り当てられた地位に付与され、他の行為者と相互作用するように期待され、義務付けられ、学習される行動様式を
役割(role)と呼ぶ。
役割はその地位に具体性を与え、地位に対応した動態的な機能面を把握する概念である。
役割を担った人に対して特定の行動を期待するのを
役割期待(role expections)と呼ぶ。
特定の相互行為場面に適応していくために、自分の地位に相応しい行動様式を適確に学び取り、それを自身の所属性に合わせて実行に移す学習現象を
役割取得(role taking)と呼ぶ。それは、役割知覚(role perspection)と役割実現(role enactment)の中間的段階にあり、行為者が社会を自分の中に具体的に取り込み、さらに自分なりの実現の仕方を工夫するという、人間の自我形成と主体性の問題に関わっている。
役割の担い手が自己の内面で主体的に処理しがたいような、同時に持つ複数の役割間に生じた矛盾した期待による葛藤を
役割葛藤(role conflict)と呼ぶ。たとえば、家庭と仕事の板ばさみにあっている既婚女性労働者、2つの異なる社会の狭間で苦しむマージナル・マンなどに生じる事態である。