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社会学理論・研究ノート-大昔の偉い人は何を考えたのかー


ギデンズ(構造化理論)

イギリスの社会学者ギデンズ(1938~)は近代社会理論を再考することで構築した独自の理論<構造化理論(theory of sturucturation)>を展開した。彼はデュルケム、ウェーバー、マルクスなどの古典的な社会理論を批判的に検討し、資本主義、階級構造について独自の見解を示し、さらに、近代化(モダニティ)をいかに捉えるのかという問題に取り組んだ。このような問題意識のもとから<構造化理論>は構築された。

彼は<構造>を、社会システムを再生産するための個人が依拠する規則・資源(rule and resources)であると定義する。そしてまた、行為や相互行為の条件であり、またその帰結であると考えた。そして、社会過程は構造を条件として成立するが、同時に構造は社会過程によって再生産されるという。彼はこの事態を<構造の二重性>と呼び、この一連の構造生成過程が<構造化>とよばれるものである。

彼はマルクス主義を継承しつつもその経済決定論や階級闘争史観、進化論的見地を排し、時間性の概念を導入し、システムの持続性・変動・解体を支配する諸条件の究明を通じて、構造論と変動論の統合を企図している。
# by ksnksociology | 2006-05-04 03:14 | 現代の社会学理論


ウォーラスティン(世界システム論)

ウォーラスティン(1930~)は、資本主義世界経済という観点から独自の世界システム論を展開する。
彼は、世界全体は一つのシステムをなしていると考え、歴史を振り返って、一つの経済、一つの政体からなる<世界帝政>と、一つの経済、多数の政体からなる<世界経済>という事態を指摘する。この、15世紀末、16世紀初頭に出現し、現在に至る<世界規模の経済体制>にみられる事態を、<世界システム>という概念で説明した。

彼は植民地とそこから独立した新興国家への関心を端緒に、マルクス主義アプローチのもと、世界規模の経済的分業体制<世界システム>を中心半周辺周辺の3つに区分した。そして、この国際分業のもと、<中心>となる国と他の<半周辺>、<周辺>となる国々との間に、不均等な構造が存在してきたことを指摘した。
そして、資本主義世界経済は、国際分業の内在的矛盾によって拡大と縮小を繰り返すと指摘する。そしてこの内在的矛盾はやがて、反システム運動へと発展していき、世界規模での社会主義政府の樹立をもたらすと主張した。

彼の主張は、マルクスの提起した労働者の搾取の問題を、支配/被支配の関係にある国家間の搾取の問題として提起したものであるといえる。
# by ksnksociology | 2006-04-27 01:48 | 現代の社会学理論


ブルデュー(文化的再生産論)

ブルデュー(1930~)は、フランスの伝統的な民族集団から教育システム、国家権力にいたる多面的な分野に関心を寄せ、そこから独自の文化的再生産論を展開した。
彼は既成の自明化された知識に関して批判的な距離をとり、実践的な行為の理解を追及した。そして、構造と実践の相互規定的なダイナミズムを分析し、さらには文化的な再生産過程の分析を通した社会構造の再生産と変革されていくメカニズムの解明を求めた。


彼は、人々の行為は常に規則に縛られているわけではなく、状況に応じて選択される、すなわちハビトゥスに基づくと考える。ハビトゥスとは、経験に基づき、個人の内面に定着している、知覚、思考、実践行動を持続的に方向づける性向である。それはまた、集合的に形作られ、個性を集合的秩序のなかに組み入れるものであり、それゆえ、社会構造の維持や再生産する行動性向をもたらすと考える。


また彼は、社会構造の再生産過程を分析する中で、階層を伴う社会的差異がいかに形成され、そして、その階層構造がいかに正当化されるかを注目する。
例えば、フランスにおいては、教育機会の均等に向けた制度改革が行われているにもかかわらず、高等教育機関の進学者に中産階級と労働者階層の間で明らかな階層間格差が生じている現実を指摘した。彼はこの問題の根本を、文化資本の格差にみている。そこでは、外見的には自由で平等に見える枠組みの中で、選別が合理化、正当化されていると指摘した。

彼はこのような、階級関係の再生産案件である支配の正当化、あるいはそれにまつわるハビトゥスの再生産が文化の制度的メカニズムを介して間接的、非人格的に行われることを、文化的再生産と呼んだのである。
# by ksnksociology | 2006-04-25 04:30 | 現代の社会学理論


ハバーマス(批判理論・コミュニケーション的行為の理論)

ハバーマス(1929~)はマルクス主義を批判的に継承しているフランクフルト学派の第2世代と位置づけられる社会学者、社会哲学者である。批判理論と呼ばれるフランクフルト学派の理論的立場に立ち、資本主義社会の矛盾を暴き出し、近代合理性の分析にその視座を向け独自の社会理論を提示する。
彼はまず、人々の社会生活の基盤である相互行為に着目し、相互行為と労働・目的合理的行為との関係を問い直す。そして、言語行為論の成果を援用し、独自のコミュニケーション的行為の理論へと議論を展開した。

また、彼は、資本主義社会の矛盾として、現代社会の抱えたシステムと生活世界の問題を主題化する。彼は社会的行為を<道具的行為><戦略的行為><コミュニケーション的行為><討議><シンボル行為>に区分し、特に対人行為として<戦略的行為>と<コミュニケーション的行為>の問題を取り上げた。前者は効率性を求める管理・操作的行為であり、後者は合意や了解を求める行為を指している。
そして、現代の日常生活の中では、システム化が進み、戦略的行為が増大していき、人間自体が疎外される事態を問題視した。これを彼は特にシステムによる生活世界の植民地化と呼び、近代の病理現象とみなした。
# by ksnksociology | 2006-04-21 04:53 | 現代の社会学理論


ルーマン(自己準拠的社会システム理論)

ルーマン(1927~1998)は普遍的な一般理論として独自の<社会システム理論>の構築を目指した。彼は、構造をあらかじめ前提とするパーソンズの構造=機能主義に疑いを示し、<機能>の観点から始めて<構造>が見出せるという機能=構造主義を唱え、オートポイエティック・システムとして社会システムを理解するよう主張した。

彼は、我々のおかれている場の総体を<世界>と呼び、この世界は<可能性の過多>にあると指摘する。彼はこの可能性の過多にある事態の総体を複雑性と呼ぶ。この複雑性は、可能性という事態を前提とした社会の<不確定>な事態を表している。彼は、この不確定な中に社会システムが創り出され、秩序をもたらすものと考える。

社会システム創出の単純な形は、個人と個人の相互作用に始まる。この時も、不確定な事態は堅持される。それはすなわち、お互いが不確定な存在としてそこにあることを意味する。この事態を彼は二重の不確定性と呼ぶ。このような事態のもと、社会システムが創られ、多様な可能性は制限され、秩序がもたらされるという。そして、この様々な可能性を社会システムによって制限すること、すなわち、秩序付けることを彼は複雑性の縮減と呼ぶのである。


彼が考える社会システムは、自らの要素から自身を再生産し、自身を差異化する。このような独自の論理から彼の理論は自己準拠的社会システム論と呼ばれる。
そして彼は、システムの自己産出という事態を、生物学者マットラーナとヴァレラの提唱したオートポイエーシスという概念を援用し、そこから独自のオートポイエティック・システムとして社会システムを捉える理論を構築した。

また、彼は、<理性>に依拠した伝統的西洋哲学が、<理性啓蒙>と呼ばれ、社会理解にも多大な影響を与えてきたが、もはや理性による社会理解には限界があると指摘し、社会システムの観点から社会を理解しようとする自らの学的営みを<社会学的啓蒙>と呼ぶのである。
# by ksnksociology | 2006-04-20 02:51 | 現代の社会学理論

    

大学院入試・試験用のメモ。底本…公務員試験地方上級・国家Ⅱ種バイブル⑩社会学<新装版>(早稲田経営出版)A.ギデンズ『社会学』第4版(而立書房)など、まだまだ追加予定!
by ksnksociology
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