ルーマン(1927~1998)は普遍的な一般理論として独自の<
社会システム理論>の構築を目指した。彼は、構造をあらかじめ前提とするパーソンズの構造=機能主義に疑いを示し、
<機能>の観点から始めて<構造>が見出せるという
機能=構造主義を唱え、
オートポイエティック・システムとして社会システムを理解するよう主張した。
彼は、我々のおかれている場の総体を<
世界>と呼び、この世界は<
可能性の過多>にあると指摘する。彼はこの可能性の過多にある事態の総体を
複雑性と呼ぶ。この複雑性は、可能性という事態を前提とした社会の<不確定>な事態を表している。彼は、この不確定な中に社会システムが創り出され、秩序をもたらすものと考える。
社会システム創出の単純な形は、個人と個人の相互作用に始まる。この時も、不確定な事態は堅持される。それはすなわち、お互いが不確定な存在としてそこにあることを意味する。この事態を彼は
二重の不確定性と呼ぶ。このような事態のもと、社会システムが創られ、多様な可能性は制限され、秩序がもたらされるという。そして、この様々な可能性を社会システムによって制限すること、すなわち、秩序付けることを彼は
複雑性の縮減と呼ぶのである。
彼が考える社会システムは、自らの要素から自身を再生産し、自身を差異化する。このような独自の論理から彼の理論は
自己準拠的社会システム論と呼ばれる。
そして彼は、システムの自己産出という事態を、生物学者マットラーナとヴァレラの提唱した
オートポイエーシスという概念を援用し、そこから独自のオートポイエティック・システムとして社会システムを捉える理論を構築した。
また、彼は、<理性>に依拠した伝統的西洋哲学が、<理性啓蒙>と呼ばれ、社会理解にも多大な影響を与えてきたが、もはや理性による社会理解には限界があると指摘し、社会システムの観点から社会を理解しようとする自らの学的営みを<
社会学的啓蒙>と呼ぶのである。