シュッツ(1899~1957)は、フッサールの現象学を社会学の中に応用することによって、独自の
現象学的社会学(phenomenogical sociology)を展開した。社会を人々の構成した意味的世界として捉え、その主観的意味付与と、既に構成されている世界と関わりという観う点から社会現象を理解しようというアプローチ。ウェーバーの理解社会学を厳密化し、現象学に用いることで社会を再検討し、間主観的な視点から考察した。すなわちそれは、他者の行為をいかに理解できるかという問題を、行為に対する我々の意味付与活動から説明し、さらに「生活世界」としての常識的知識や日常的世界に注目することで知識社会学的な究明を行なった。
シュッツは、我々は意味的に構成された世界である間主観的な
生活世界(life world)に生きていると指摘する。このような立場から彼は、
日常経験のあり方を考察し、生活世界はいかに構成されるかを根源的に問うた。つまりそれは、経験の起点「わたしのいまここ」を主題化するには、「いまここ」を超越する様相を主題化しなければならないということである。
そして、彼は
意味的に構成された世界には、多様な解釈が可能な重層的現実が存在すると指摘する。つまり、社会的現実が複数の意味領域からなっていることを示している。このような現実の特徴を彼は
多元的現実(multiple realities)と呼んだ。それはつまり、現実とは自己体験の志向的意味措定と解釈に他ならない。
このシュッツの探求は、バーガー、ルックマンらに受け継がれ、社会学における「解釈的パラダイム」や「意味学派」として一括される新しい潮流として注目されている。